FED UP SAMPLER VOL.11
大阪北堀江にあるセレクトショップ "FED UP" の
MIX CDシリーズの11枚目が、今回の"FED UP SAMPLER VOL.11"である。

かつてDMC UK FINAL等のDJ バトルにも出場していた程のターンテーブルテクニシャンでありながら、えげつないグルーヴ感覚の
持ち主でもある。彼が多くのバトル上がりのDJと違うのは確固たるブレないスタイルがあり、自分がどこに向かってるのかを知っている。
その答えは、今も昔も路面に晒された一枚100円と書かれたのエサ箱や、街外れの寂れたリサイクルショップの隅っこで今でもたまに見つけられるとヤツは言っていた。
そんなK-FLASHが今回のMIXに収録した曲は興味深く、大阪を中心とする多数の旬な日本人HIPHOPアーティストとUSのストリートな
HIPHOPがバランス良くフューチャーされている。

収録されている日本人アーティストのラインアップはフレッシュなラインアップがずらりと並んでいる。
1曲目に収録されたC-L-Cは大阪のストリートでは知られたラップアスリートだ。元々シーラカンスと呼ばれていた頃から3人組になった今、
そのスタイルはより洗礼され、円熟味を増した。OOGAWAせせらぎ (AKA ODS), K-SLIDE, 吉田のBOOBIE 3人のスキル達者なMC達が言葉で描く
ブループリントはDJ ENDRUNがオーガナイズしたビートのキャンパスに鮮やかに融合しHIPHOPの神によって"ZERO-EP"にCLASSICの刻印が刻まれようとしている。
その奇才DJ ENDRUNと共に大阪の"好きモン"のヘッズが集まる最高なパーティーがある。
腕利きのDJ達が集うその遊び場"BACKROOM"で自らレジデンツを勤める新鋭のビートメイカーYOSHIMARL(#2)、
都 会のハイブリッドなマインドと未来型のファンクネスを携え、急速に頭角を表して来た四人組のユニット"MADS"からCHAKRA, GO, PEPCEEに加え、MADSのほぼすべての楽曲を担当しBIOLANTEZ, LLKPなど多岐にわたるプロデュースワークとリリースでその名を広めているSH BEATS (AKA KROUD)等の音源も多数収録。
さらには大阪のHIPHOPシーンの最前線を今なお走り続けている実力派MC "ZIMBACK"、シンゴ西成やSEEDA等との楽曲でも知られる黄色い龍こと"SMOKING-P"、
昨年大阪で行われたビートバトル"BEAT MAKERS"にて見事優勝を果たしたDJ KILLERSOUL。
大阪CITYをレップするこれらの猛者に加え、東京からその煙たいビーツとファンクネスでシーンに風穴をあけたBUDAMUNK、NIPPS率いる黒いラップゲリラ"TETRAD THE GANG OF FOUR"、 さらにはMEDULLAのMC兼ビートメイカー
としてクオリティーの高い作品をハイペースでリリースし続けている"MASS-HOLE"、MIX CDの終盤にはK-FLASH本人が日々のDIGGINから発掘した和物のブレイクスまで幅広く収録されている。

そ してこれら国内のアーティストと共に収録されているUSアーティストがROC MARCIANO & SEAN P (YOSHIMARL REMIX!)、9th WONDER、TORAE、EDO-G & PETE ROCK、KEV BROWN等の良質なアンダーグラウンド物からSTALLEYやCURREN$Y、ASAP ROCKY等の今のリアルなHIPHOPシーンの最前線で活躍するアーティストまで幅広くチョイスされている。
MIXを担当したK-FLASHはこれらの日本人アーティストとUSの現行のHIPHOPサウンドを見事なまでのスキルとセンスでミックスさせ、これまで感じることの多かった
日本とUSの音的な温度差の垣根を取っ払い、一つのマスターピースと言える仕上がりになっている。


Fed Up sampler vol.11 TRACK LIST

1, C-L-C / FILLET (prod. ENDRUN)
used from "C-L-C / ZERO EP"


2, ROC MARCIANO ft. SEAN PRICE / SNOW (YOSHIMARL REMIX)
used from "YOSHIMARL / BEST KEPT SECRET"


3, 9th WONDER / WHAT'S GOOD (INSTRUMENTAL)


4, KAIMBR & KEV BROWN / SONGS


5, ED OG & PETE ROCK / RIGHT NOW


6, TORAE / THE RAW


7, MASS-HOLE / COPENHAGEN ( remixed by MASS-HOLE)
used from "MASS-HOLE (MEDULLA) / DIG DUG LOST FOSTEX MTR"


8, BUDAMUNK / RIFT
used from "BUDAMUNK / BLUNTED MONKEY FIST"


9, ZIMBACK / RAINY NIGHT
used from "ZIMBACK / SOUL BROTHER"


10, RADOO & PEPCEE / CITY GUIDE (ft. CHAKRA from MADS & OOGAWA from C-L-C)
used from "RADOO & PEPCEE / SOUL SURFER EP"


11, CHAKRA & GO / YEN TOWN WALKER (prod. by ODS)
used from "CHAKRA & GO / WEED & MALT EP"


12, SMOKIN P / CITY DIESEL ft. CHAKRA (prod. by MONEY JAH)
used from "


13, SH BEATS / DIGITAL (RUGGED MIX) prod. by SH BEATS from MADS


14, KILLER SOUL / SUMMER BREEZE (instrumental) prod. by KILLER SOUL


15, JET LIFE / 1st PLACE (ft. Curren$y, Trademark Da Skydiver, Young Roddy & Mikey Rocks)


16, TETRAD THE GANG OF FOUR / SURROGATED MOTHERSHIP (prod. by KEN SPORT)
used from "TETRAD THE GANG OF FOUR / NIPPS presents TETRAD THE GANG OF FOUR"


17, STALLEY / MIDNIGHT SATORI


18, CURREN$Y / JET LIFE


19, ASAP ROCKY / TRILLA (ft. ASAP TWELVY & ASAP NAST)


20, LEROY HUTSON / GIVE THIS LOVE A TRY


21, JAPANESE BREAKS


22, LEROY HUTSON / LOVER'S HOLIDAY


23, CHAKRA & GO / WEED & MOLT (prod. by SKINNEE TAH)
used from "CHAKRA & GO / WEED & MOLT EP"


K-FLASH プロフィール


DJ歴15年目イギリス生まれの日本育ち。

高校生の頃に友達から借りたBEASTIE BOYSやLL COOL J、ブッダブランド等アルバムの影響によりHIPHOPの虜に。
そんな矢先、とあるテレビ番組がきっかけで一夜にして人生が一変してしまう出来事に遭遇。
それは東京で開催されていた99' VESTAX EXTRA BAGANZA DJバトルの特集だった。
今も尚レジェンドと呼ばれるTOP DJ達が一堂に会した伝説の夜、稲妻にうたれたようなショッキングな映像を目にした。
その中でも特に衝撃を受けたのがBEAT JUNKIESのDJ MELO-Dであった。
そのファンキーでテクニカルなスタイル、風貌、アディトゥード。説明することのできない何かとてつもないエナジーに彼はヤられてしまったのであった。
その日を境にK-FLASHこの世にも不思議な黒い円盤の世界にハマっていった。

高校を卒業し、意を決して母国イギリスに渡ったK-FLASHはひたすらターンテーブルスキルを上げる日々を送っていた。
当時唯一あった地元のレコード屋にはMr. Krum (DJ FORMATやLORD FINESSEのアートワークも手がけるDJ&名CRATE DIGGER)の店に
ほぼ毎日通い詰め、家に帰ってはストイックになまでにDJingに没頭する毎日。その合間で地元のパブやハウスパーティーでも精力的にスピンしていた。

そんな生活が2年ほど続いた後、彼はターンテーブリストのワールドカップとも呼べる大会、DMCにエントリーする事を決意。
出場した1年目は惨敗という形で終わるものの、そこから強烈な反骨精神とハードワークでのし上がり、翌年の2002年と2003年には見事地方予選を
突破し、国内でたった10名程しか残る事のできないUKファイナルまで2年連続での出場を果たした。それは日本人が異国の地でやってのけた
初の快挙であった。2002年の夏には一時帰国した日本でB-BOYパークのDJバトルにも出場している。

しかしその頃からDJバトルの音楽性を無視したスキル重視の傾向に葛藤を覚え始めるようになる。
誰もが認める超絶スクラッチスキルを持つK-FLASHであったが、彼にとっての一番重要な要素である"ファンクネス"と人の心をロックする精神の失われたターンテーブリズムにどこか違和感を感じていた。
多くのDJが優勝するために自分専用のヴァイナルをプレスし、既存のバトルブレイクスを使い倒すオリジナリティーの無いDJが多く現れるようになり始めた。
観客をロックすることが前提で無くなってしまったなら、いくらスキルがあっても何の意味も持たない事をK-FLASHは理解していた。
悩み込んでいたK-FLASHが出した答えは原点の回帰であった。グルーヴを掘り、自分の好きなサウンドやスタイルを知り、マネの出来ない味を生み出す事こそが彼の求める
本質的な姿であることに気が付いた。HIPHOPカルチャーとターンテーブリズム (DJバトル) は切っても切り離す事は出来ないモノ、どちらかが欠けても成立しないものであることを理解し、K-FLASHは活動の場をバトルシーンから現場のパーティーに移していった。


その後、K-FLASHは活動の拠点を日本にする事を決意し2004年に帰国。
帰 国後は関西を中心に積極的に活動し、DJ PREMIER, SLUM VILLAGE, JERU THE DAMAJA, LITTLE BROTHER, PEOPLE UNDER THE STAIRS, AFRICA BAMBAATA, UGLY DUCKLING、DEV LARGE、KZA、等多数の国内外アーティストとの競演も果たしている。
帰国後のレコード屋での勤務経験もあり、キャリアをスタートしてから常 にレコードと隣り合わせの生活を送って来たK-FLASHにとってHIPHOPとそのバックボーンであるカルチャーやサンプリング、ディグの精神は彼のス タイルに深く根付いている。帰国後にリリースされた"SMOKE WIT ME", "NU-CLEAR BOMB CLASSICS"等のミックスCDでは、
スキルのみを追い求めたバトルあがりのDJ達が忘れがちな、HIPHOPに対する造詣の深さも伺う事のできる名作となっている。

近年は大阪に拠点を置き、DJとしてパーティーをロックする傍ら、"Mic ILLNANDESS"と言う名前でMCとしても活動しており、PSYCHO PATCH (サイコパッチ)という
3人組のグループでのライブも活発に行っている。そのラップスキルはDJとして生きてきた彼にしか出す事のできないスタイルであり、同業者から絶賛の声があがっている。
今後ますます動向が楽しみなこの男の動きに要注意だ。